楽譜には、音符だけではなく「楽語」と呼ばれる言葉がたくさん散りばめられています。
演奏をされる方は見たことがありますよね。
leggiero(軽く)とか、dolce(やわらかく)とかのあれです。
新しい曲の譜読みに入るとき、早く弾けるようになることに集中するあまり音符しか見ずに、この楽語を素通りしてしまう生徒さんがよくいらっしゃいます。
実は私も子供の頃はそうでした。
でも、この楽語はとても大事なもの。
そこに書かれているのがcalmato(静かに)とappassionate(熱情的に)では、弾き方が正反対となります。
写真の楽譜はドビュッシーの『人形へのセレナード』。
近現代に作曲された曲は、楽譜に書き込まれている楽語が多いです。
一般に、楽語はクラシック音楽の中でも古い時代にはほとんど書かれておらず、時代が新しくなるごとにどんどん増えていきます。
それは、古い時代はクラシック音楽が限られた人たちのためのもので、演奏法が半ば暗黙の了解となっていたからだと言われています。
それが時代が新しくなるごとに演奏する人の裾野が広がり、作曲者自身がどんどん指示記号を楽譜に書き込むようになりました。
(なので、古い時代の曲で、楽譜に書き込まれている楽語は、作曲者ではなく校訂者の書き込みが多いのです)
いずれにせよ、楽譜に書かれていることは、演奏する上でとても大事な情報です。
生徒さんには、楽譜に書かれていることは作曲者からの手紙のようなものとお話することがあります。
大切な人からの手紙だったら、書いてあることは丁寧に読み込みますよね。
「昨日何の曲を聴いた?」という質問をしたのに、適当に読み流されて「昨日はケーキを食べたよ」と返されたら切ないじゃないですか。
(いや、むしろ笑っちゃうかな)
大切な人からの手紙に接するのと同じように楽譜と向き合うことが大事です。
作曲者や、曲を研究して楽譜を校訂する方々は、演奏する人たちに向けて楽譜にメッセージを残してくれています。
そのメッセージに耳を傾け、演奏していきましょう。
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