poco a poco

新潟市西区にある坂場ピアノ教室のブログです。poco a poco(ポコ ア ポコ 少しずつ)自分のペースで音楽を楽しむ毎日を。

感覚の再現

先日、写真展に行ってきました。

写真展と音楽の間には直接的な関係はありません。
しかし、間接的には関係があります。そもそも、生きていく上で音楽に関係しないことなどありません。

話は飛びますが、これをご覧になっている方で「ガラスの仮面」をご存知の方は多いと思います。
単行本の24巻。自分とは全く正反対の、優美な王女の役を演じることになった北島マヤは、うまく役柄を掴むことができず悩みます。
そこで、紫の薔薇の人が一計を案じ、マヤは、以前王女の役を演じたオペラ歌手に会うことができます。
そこでその女性は、演じる上で「感覚の再現」というものが大事だということを、一輪の薔薇を使った問答でマヤに伝えます。
この話を読んだとき、私はふうん、と思いながら話の面白さにのみ没頭して読み進めていました。
しかしずいぶん経ったのちに読み返した時に、白目になるほどの衝撃を受けたのです。

音楽においても、この「感覚の再現」というものは非常に重要になってきます。
たとえば、「優しい」「冷たい」「硬い」「柔らかい」音を表現しようと思ったら、演奏家は自分の中にあるそれらの感覚を取り出し、音色で表現できるように工夫します。
ある感情を音楽で伝えようと思ったら、やはり自分の中から該当する感情を探ります。
想像で補わなければならないものでも、自分の中に蓄積されたものの中から取り出し、繋ぎ合わせ、練り上げていきます。

演奏家の中にないものを、演奏家は表現できないのです。
ですから、音楽に携わる人は、常に多くの感覚を採取し蓄積していかなければなりません。
その感覚は、音楽以外のところにも、たくさん存在しています。

ですから、私は音楽に直接関係のないものもとても大切にしています。
生徒さんにも大切にしてほしいと思っています。
と言っても、「音楽のために!」と固く考えることもないんですけどね。
自分の興味のあること、楽しいこと、遊びの中からも、学べることはたくさんあります。
怒りや悲しみも、感じている真っ只中の時はとても辛いですが、過ぎてしまえば、それらも大切な感覚です。

今回訪れた写真展で飾られていた写真は、どれも陰影が濃くて、それ故に色彩や光がぐっとこちらに差し迫って来ました。
明るいだけのものよりもその明るさが伝わってくるということにとても感じ入りました。
なんと写真家ご本人から直接たくさんお話をお聞きすることができ、素晴らしい時間を過ごすことができました。


日々感じることをひとつひとつ丁寧に掬い上げていく。
それらは、音楽で表現をする上でとても大切なことです。
そして音楽のみにとどまらず、感じる感覚が多いというのは、人間の豊かさにも繋がると思っています。