先日、小学生の生徒さんがピアノの椅子に座るなり、「今日はやる気が出ないんです…」とぽつりとつぶやきました。
おやおやと思って「どうしてやる気が出ないの?」と聞いてみたら、レッスンに来た曜日がその子にとってあまり綺麗な色のイメージではないからとのこと。
金と黒が混じった暗い色なのだそうです。
なんて面白い。
と思って別の曜日の色のイメージも聞いていたら、話し終えて満足したのか、きりっとレッスンに集中し始めました。
そのまた別の日。
先ほどの生徒さんとはまた別の小学生の生徒さんが、今やっている曲が好きになれないと言ったので、「どういう曲が好きなの?」と聞いてみたら、それはもう事細かく好きな曲の特徴を教えてくれました。
同時に、今やっている曲のどこが好きになれないかも話してくれました。
「うん、◯◯ちゃんがどうしてこの曲が好きじゃないのかよくわかったよ。相性が良くなかったり嫌いな曲もあるよね。でも、この曲はここのテクニックを勉強するのにとても大事な曲だから、とばせないんだ。これが終わったら、好きな曲をやろうね」
納得してくれたのか、次の週のレッスンではきちんと練習してきてくれたので、無事に合格となりました。
やる気が出ない。
曲が嫌い。
練習したくない。
レッスンを続けていたら必ず遭遇する生徒さんの本音です。
ピアノ講師になりたての頃は、生徒さんのそういう気持ちに出会うたびに焦ってなだめたりすかしたりと大慌てでしたけど、最近は、そうなんだねと受け止められるようになってきました。
だって無理ないことですもの。大人だってそう思うことはいくらでもあります。私もよくあります。
いつもいつもやる気があって練習大好きという人はそうそういるものではありません。
どう対処するかは生徒さんによっても違いますし、ケースバイケースでその時によって違いますが、いつも心がけていることは、まずは生徒さんの気持ちを否定しないということです。
子供は、練習しなければならないことも、きちんとレッスンに臨まなければならないこともよく知っています。
でもできない。したくない。
それが、良くないことだということも知っているんですね。
それを、頭ごなしに叱って無理にやらせても、その場は良くてもそのうち生徒さんの心は離れていきます。
反対にご機嫌とりに走っても、生徒さんの信頼を失っていくだけです。
どうしてそう思うのか。その理由に、大切なことがぎゅっと詰まっている気がするのです。
ただ気分に振り回されているだけと言う場合も多くあります。
でも、淡々と自分の気持ちを聞いてもらえると、落ち着く生徒さんは多いんですね。
いやだ、という気持ちをまずは生徒さん本人と一緒に受け止めて、じゃあどうしようか、と次を考えていこうと思っています。
なかなかうまくいかない日もあるのですが、そういう日は深刻になりすぎず、笑顔でレッスンが終わるように心がけています。
人間ですから、マイナスの気持ちというものは必ず出てくるものです。
生徒さんのものも、もちろん自分のものも。
そことどう付き合うか、これからも試行錯誤していこうと思います。